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もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー49)

通巻第211号 『モノ』という言葉についてーその23

 『モノ』という言葉を逆接語法として使う場合、その語形は普通「ものを」ないしは「ものに(のに)」という姿をとる。しかし時には、この『モノ』という言葉が省略されて文中に現れない事もある。この隠れた『モノ』の好例が短い文中に纏(まと)まって顔を出す書物があるのでお目にかけよう。あの有名な【竹取物語】の一節である。少し長くなるがお読み頂きたい。
...【竹取物語】 
 立てる人どもは、装束の清らなること、物にも似ず。飛車(とぶくるま)一つ具(ぐ)したり。羅蓋(らがい)さしたり。その中に
王(わう)とおぼしき人、家に、「宮つこまろ、まうで来(こ)」と言ふに、猛く思ひつる宮つこまろも、物に酔(ゑ)ひたる心地して
うつ伏しに伏せり。いはく、「汝、おさなき人、いささかなる功徳(くどく)を翁(おきな)つくりけるによりて、汝が助けにとて、
かた時のほどとて下ししを、そこらの年頃、そこらの金(こがね)給ひて、身をかへたるがごと成りにたり。かぐや姫は、罪をつくり給へりければ、かく賤(いや)しきをのれがもとに、しばしおはしつる也。罪の限(かぎり)果てぬれば、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く、能(あた)はぬ事也。...以下、省略。
 
 逆接語法の箇所がお分かりになっただろうか。
...「かた時のほどとて下しし(  )を...」の所である。「下しし」のあとの空白(ブランク)に「もの」が入るのである。
 「ほんの少しの間だけ、お前(竹取の翁)の所に(かぐや姫を)与えてやったのに...」という逆接である。
 「下しし」と言うのは、「下した」の連体形で、あとに名詞(体言)を伴わなければならないのだが、その体言「もの」を自明の
こととして、ここでは省いているのである。
...「罪の限果てぬれば、かく迎ふる(  )を、...」 空欄には勿論、「もの」が入るのである。
 かぐや姫の「罪の償いの期間が終わったから、このように迎えに来たのに...」と、天人は、翁が道理を弁(わきま)えずに姫の
昇天に嘆き逆らうことをたしなめている訳である。

 『モノ』という語彙が姿を現さないのは、自明の事だから省略されているのだと私は説明したが、この事は言葉を省略した事の主な理由として確かな事ではあるのだが、どうもそれだけではないように私には思われる。一種の忌み言葉として、この『モノ』という言葉を口にすることさえ、文字にする事さえ憚(はばか)ったと言った意味も有ったと私は考えている。
 同様の表現の仕方は、アイヌ語にも有るのだろうか。「 -p ,-pe 」に代えて別の言葉を使い、或いは、言葉そのものを避ける
語法が有るのか、それが次の課題になる。  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-03-23 12:46 | Trackback(2) | Comments(0)