もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー16)

アイヌ・日本の民俗とアイヌ語(その16)  通巻第178号

 「鬼(オニ)というもの」ーその1

 アイヌ語と日本語で関連があると思われる語彙(ごい)に、「オニ( oni )」という言葉がある。あの鬼は外の鬼、桃太郎に退治されてしまう角の生えた鬼のことである。「鬼」という漢字を使う名前だし、閻魔大王などとともに仏教説話にも出てくるから、
中国かインドから来た化け物なのだろうと思っている人が多いと思う。だが、実は、あの虎の皮のフンドシをはいて鉄棒をドンと構えて威張っている赤鬼や青鬼というのは、外国から来たのではなく、日本の民衆が産み出した、オリジナルの妖怪なのである。

 昔、日本中のお寺などで「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれるぞ」だとか、「坊さまに悪さを働くと地獄に落ちる」などという
法話に名を借りた僧侶の脅し文句が盛んに行われ、子供だけでなく大人も本気で恐れたという状況があった。布教やお布施を強要する一種の詐欺商法のようなものである。閻魔大王の手下に鬼の姿が描かれ、地獄に送られてきた亡者(もうじゃ = 死んだ人)を
酷い責め道具で拷問している絵が、お寺の額に掛かっていたりしたのである。中国やインドの仏教説話には、そういう、額や頭のてっぺんに角の生えた鬼などは、一切(いっさい)登場しない。
 では、日本の土俗宗教・民間信仰で、絶大な知名度と人気(⁉)を誇る、あの「鬼(オニ)」という魔物は、いったい何処から来た、どんな素性をもつ妖怪なのだろうか。

 ...鬼(オニ)という言葉は漢字で書かれ、音読みでは「き」と読まれる。オニと呼ばれる存在が何者であるかは、順序としては
先ず、中国語でその「鬼」がどういう存在を意味するかを調べるのが筋(すじ)というものだろう。現代の中国語では、現代中国語辞典によれば「 gui (クイ)」と読み、意味は「霊、霊魂、妖怪」といった名詞、形容詞では「陰険な、酷い、後ろ暗い、陰でこそこそしている」などである。全体として「死者に関わる陰鬱なもの」を意味する。
 私はアイヌ語と日本語の共通の祖語である「縄文語」が存在したと信じているのだが、その縄文語では「オニ」という言葉は「死者」を意味したと考えている。しかも、その死者もただの「死んだ人」ではなく、腐れ果て恐ろしい姿に、異形の姿に変わり果てたものを指すと考えている。亡くなった愛しい妻のイザナミを忘れかね、黄泉(ヨミ)の国まで追いかけ尋ねたイザナギの命が
その愛しいはずのイザナミの体に蛆(うじ)が涌(わ)き、恐ろしい姿に変わり果てているのに驚き怖れて、色々な物を投げつけ、呪いの言葉を投げ掛けた、神話の世界の「 oni 腐り果てた死者」である。現代のアイヌ語でも、「 on-ne オンネ」という語は、
「年をとって死ぬ」を意味するが、元々の意味は「死者・のようになる」だったのではないだろうか。  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-02-18 19:08