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もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー52)

通巻第214号 『モノ』という言葉についてーその26

 『モノ』という大和言葉と、アイヌ語の『 -pe 』という語句は、一見しただけでは、互いに遠く離れた無関係の存在に見えるのだが、「語頭子音の可逆的交替」の原理を介在させるだけで、両語の直接の繋がりは、一気に見え易いものになるのである。
 直接的には、「もの、もん、まう、まん」と発音される語彙グループと、「ぼう、ばう、ばん」の音をもつ語群を比較してその
間の関係を明らかにする作業を行う事になる。少しの間だけ耳を傾けて頂きたい。

 「穏亡(おんぼう)」という言葉がある。「穏坊」とも表記され、江戸時代以降に生まれた比較的新しい語彙かも知れない。
 火葬場で死体を焼く職業の人を呼んだ呼称と辞典にある。従事する職業により人を差別する蔑称である。「亡」や「坊」という言葉は、「忌むべき人」を差していることは、前に述べた通りである。古くは「ばう」と表記され、実際の発音は、「ばん」か、ないしは「ぼん」だっただろうことも何度も述べてきた。

 もう一つ、「ばう」に関わる語彙を検証しよう。「泥棒(どろぼう)」という言葉がある。泥にも棒にも盗人(ぬすびと)に繋がる
意味はない。単なる宛字に過ぎないのはご承知の通り。「泥棒」という語は、かなり古い時代から使われていたもので、諸説有るうち、通説の「盗(と)らばや」ではなく、私は「盗らばう=盗む悪者」、特に強盗の類いの凶暴なものを指した言葉なのだと見ている。窃盗犯のようにコソコソしたイメージのものでなく、強盗を意味したと。それは、「ばう」という音(おん)が凶悪さを意味するものだからである。

 これは「べえ」や「っぺ」に、延(ひ)いてはアイヌ語の「 -pe 」に連なるものである。と同時に、音韻の交替により「ぼう・ぼん」を中間項として、「まう(もう)・もん(もの)」という趣(おもむき=味わい)の異なる新たな語群に展開して行く事になるのである。
 「亡者(もうじゃ=近代の発音)」という言葉は、古くは「ばうさ(ばんさ)」と読まれ、或いは「まうざ(まんざ)」に近い発音が
為され、そして『モノ = 鬼(死霊)』とも呼ばれたのではないだろうか。
 言葉の発音の実際の時系列的な順序は、この通りではないのかも知れないが、亡者という言葉は、全体としてこういった変化と発展の道筋を通って成立しただろう事だけは断言できると私は思うのである。

  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-03-26 11:59 | Trackback(1) | Comments(0)