人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー72)

通巻第234号 「たま」という言葉についてーその19
 日本語に於いても、「食べる」と「食う・喰らう」とでは意味合いがかなり異なる。現代語では、「喰らう」の方は日常用語としては死語に近い形になって、例えば、「大飯喰らい(おおめし・ぐらい)」のような特殊な言い回しの中でしか使われなくなってしまった。一目で分かるように、「食う・喰らう」は品格を欠く言葉と見なされており、公式の場所での会話に用いたり出来ないし、私的な場合でも、女性などは口にしにくい言い回しである。これは、アイヌ語と同様、その言葉を使う人の立場、人間関係が
この言葉の意味の違いに関わるからである。

 一言で説明すれば、「喰らう・食う」は、「争い、打ち克って相手を喰ってしまう」という、彼我の闘争を前提として成立した言葉なのである。例えば、熊や虎が獲物を仕留めて喰ってしまうという関係、そういう状況を表す語彙なのである。人間が厳しい自然環境の中で、命を繋ぐための動物たちとの苦しい闘いを余儀なくされていた時代に出来た、由緒のある古い言葉なのだと私は思う。
 一方、「食べる」の方は、「喰うか喰われるか」の闘いを前提とせず、言わば、平和裡に食糧を確保できるようになった時代の新しい表現なのだろう。「用意された食事を有り難く戴く」と言った感覚が、この言葉の基本概念である。さて、アイヌ語に眼を向けよう。

 「アイヌ民譚(みんたん = 民話)集」『パナンペ死んだ真似をする』より
...hokure hokure teeta a-utar   i-koronnu a pewre kampo a-e ro a-e ro !
  そらそら 先だって 俺達の同族を 殺した   柔らかい肉だ 喰ってやろう喫ってやろう‼
 
 この譚は、人間に仲間を殺された狐たちが、人間に復讐して、よってたかって人間を喰ってしまおうとする物語である。ここで注意して頂きたいのは、狐たちは人間に跳び掛かって、人間をやっつけて、そして相手を喰ってしまおうという訳で、だから、「みんなで食べよう! = ipe-an ro ! 」とは言わずに、「 a-e ro ! a -e ro ! = 喰ってやろう! 喰ってやろう! 」と言ったのである。
 日本語と同様に、アイヌ語でも、「食べる = ipe 」という語彙は、闘って打ち克って相手を喰ってしまう「 a-e 」と違って、
用意された、提供された美味しいものを有り難くいただくという語感を纏(まと)った言葉なのである。
 なお、「 a-e ro ! 」という文は、「我ら喰おう! 」という意味でなく、一方的な力で相手を「喰ってやろう!」と言っているのだということに注意を頂きたい。前に述べた『アイヌ語・日本語同系論』の通りなので思い出して頂きたい。 (次回につづく)

名前
URL
削除用パスワード
by atteruy21 | 2018-04-18 11:24 | Trackback(2) | Comments(0)