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もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー83)

通巻第245号 「たま」という言葉についてーその30

 大和言葉の「ぬし(主)」という言葉は、アイヌ語の「ニシパ( nispa )」という語彙と繋がりが有るのかも知れない。それは、意味の上からも音韻の面でも十分に考えられることである。しかし仮に会津方言の「にしゃ」という語を仲立ちにしたとしても、それがコマとしてピタリと中間にはまり込み、両者が隙間なく繋がったと言い切るには、何かもう一つ足りないのである。
 それは、音韻の点ではアイヌ語のニシパの「パ」の音と、会津方言の『にしゃ』の「や」の微妙な違いが埋められるかの問題であり、また、文法的に見た場合でも、何故「ニシパ」の「パ」が大和言葉の「主(ぬし)」からは抜け落ちたのかの説明に欠けるという難問が残るのである。

 だが、この音韻問題と文法問題は、一つの視点を据えることにより、二つながら同時に解決する。その一つの視点とは、言葉というものは、語の成立当初の本来の理由が忘れ去られた場合に、語彙に形態的な変化がもたらされることも有れば、その語の文法上の位置・性格すら変わってしまう場合があるという点である。具体的に述べよう。

...会津方言の「にしゃ」は、アイヌ語のニシパ( nispa 天の頭 )から来た言葉だろう。だが、その本来の、宗教的権威に満ちた遥か高い位置にあるお方という言葉の位置付けが忘れ去られてしまうと、それは只の「あなた」の位置に降格した。決して客体になることの無い、孤絶した高みにあるお方から、同じ目線に立つ只のあなたになったのである。当然に人から何かをされ、被害を被(こうむ)る立場にさえなり得る訳である。となれば、主格であることを示すためには、「あなた・は」を表す語の構成として、「にし・は」という位置付けを「にしゃ」に与えたのだろう。

 大和言葉の「主(ぬし)」は、縄文語( = アイヌ語 )の nispa を語源とするものだろう。それが会津方言の「にしゃ」のような中間的形態を経て、「ぬしゃ(主は)」となり、最後に主格を表す格助詞(と彼らが考えた)「は」を語尾から取り除いて「ぬし」という語彙は成立したのである。

 ただ、問題点は残る。主に当たる「あなた」が、どうしても行為の客体になる、目的格に立たねばならないときは、大和の古人たちは何と言ったのかという問題である。「あなたに、~してやろう」などと言うとき、「主(ぬし)に...」とは文法上言えない訳だから、その時は「お・主に」とか「主・様に」などと、目的格に立ちこそすれ、その方は高い位置に有ることを示す接頭辞ないし接尾辞を付けたのである。  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-04-29 16:16 | Trackback(4) | Comments(0)