人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー98)

通巻第260号 「たま」という言葉についてーその45
 柳田國男氏の著書の後狩詞記(のちの・かりことばの・き)に出てくる「タマス(分け前)」という特別な用語に、私は「給す」と勝手に漢字のカナをふった。名詞を動詞として扱うほか、この言葉を取り巻く状況や前提条件を全く考慮に入れない無責任な主張であることは私にも分かっている。
 「給す」という語彙は、中央語にそういう語彙が使われた例が無いだけでなく、方言としても、この日向の言葉としても動詞としては用いられた事はない。

 だが、この私の「振り漢字」に込められた主張というのは、単に思い付きや独断であると片付けられて然るべきものではない。アイヌ語や「縄文語」には有って、イヤ、実は古い時代の大和言葉にも数多く存在したと思われる、閉音節(子音終わり)の語彙の性質に関わる文法上の重大な問題が、そこに横たわっているからである。具体的な形で説明しよう。
 後狩詞記の「タマス」は、古い時代の大和言葉の面影を残した、言わば言葉の化石だと私は思っている。古い時代の中央語は、時を経て周辺語(地方語)に、方言にその元の姿をとどめる事が多いというのは、言語学では常識だという。

...「タマス」という語は、私の見る所では、「 tamas (タマシ )」とアルファベットでは表記されるべきものである。語尾に来る小さい文字で表される「 シ 」は、後ろに「 u 」の母音を伴わない閉音節の「 シ 」であって、「ス su 」と発音されるものではない。この発音は、少し昔の東北人の「し」と「す」の間の、有るかないかの微妙な発音の違いを思い起こして頂ければ、この「タマス」と言う語の正確な発音も、おおよその見当が付くというものである。
 例えば、「俺は知らない」と言うことを、三~四十年前の東北の男性が仲間に言う場合、東京の人が聴くと「おら、すらね」と聞こえただろう。

 後狩詞記では「タマス」は名詞として用いられているが、これを私は動詞として捉えているのである。一般的には、動詞が形を変えずにそのままで名詞として機能する為には、その動詞は自動詞でなければならないとされるから、「タマシ」が「分け前」という名詞となるためには、「給す」は自動詞であるとしなければならない。「分け与える」や「分配する」は通常、分ける対象となるもの=目的語を要求する。つまり、「タマシ」が何かを分配すると言う意味だけなら、それは他動詞でしかない。従ってその「動詞」は、「分け前」と言う「名詞」と、このままでは並立できないという結論となる。併存するためには、語尾に名詞化辞を付けて「タマシ」とするか、「タマシ」を別の意義を持つ自動詞と考えるかの二者択一になる訳である。
 私は「タマシ」は分配するのほか、別の語義を含む自動詞をも兼ねると考えているのである。  (次回につづく)

Tracked from Likeside blo.. at 2019-06-29 03:35
タイトル : Likeside blog entry
もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー98) : アイヌのこともっと知りたい... more
Tracked from roblox music.. at 2022-06-15 18:47
タイトル : roblox music id codes
もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー98) : アイヌのこともっと知りたい... more
Tracked from roblox song .. at 2022-06-15 18:52
タイトル : roblox song codes
もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー98) : アイヌのこともっと知りたい... more
名前
URL
削除用パスワード
by atteruy21 | 2018-05-17 11:58 | Trackback(3) | Comments(0)