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もっと知ろう‼アイヌのことーその3(アイヌ・日本の民俗とアイヌ語ー113)

通巻第275号 「たま」という言葉についてーその60

 王の乗った天駆ける舟(あま・かける・ふね = 熱気球)は、遠く高く太平洋の彼方へ飛び去り、還ることは無かった。熱気球は南米大陸の海沿いの山脈を越えて、常に西へ沖へと吹き続ける強い風に乗って、太平洋の彼方まで飛んでその船旅を終え、洋上に落下する。王は再び民の前に姿を現すことはない。何故なら神の国、天上の世界へ旅立ったからである。

 インカ文明における王の葬送は、「天空葬」とでも名付けるべきか、世界の葬制に類例を見ない極めて特異なものであるように見える。しかし、この奇想天外な点だけに眼を奪われることなく、この葬制を編み出した考え方の底を流れる観念に着目すると、民族の違いを越えて古代の人々に共通する死生観が見えてくるのである。前回に少し触れた、古代エジプト文明の葬送の形に関連付けて考えてみよう。
...古代エジプトでは、王に限らず一般の庶民、果ては愛玩動物の猫のミイラまで作られ、人々は死者を送った。王のミイラ作製に関して言えば、まず遺体を清め、内臓を取り出して特別の容器に納め、遺体は清浄な布で緊縛され保存される。何故、わざわざ幾つもの工程を経て遺体を神(ミイラ)にしたのか。

 エジプトのミイラ作りの工程には、それぞれに儀式の意味が込められて凝縮され、ないしは象徴化されていると私は考える。
遺体から内臓を取り出すのは、恐らく古くは遺体は解体されたのち、内臓は神に捧げられ、儀式の後には人々がその内臓を食べたのであろう。取り出した内臓を入れるのは、動物の形をした容器で、それはとりもなおさず動物神に捧げたことになる訳である。
 時を経て、取り出した内臓は食べられなくなった。そして、遺体は丁寧に保存処理され、その遺体自体が、今度は信仰の対象とされることになるのである。広く世界で、保存された遺体が信仰の対象となったことは知られている。日本も例外ではなく、即身成仏(そくしんじょうぶつ =修行後自らの意志で ミイラ化した僧の遺体)の信仰が各地に残っている。
 ミイラはまた、信仰の対象であるだけでなく、時に万能の妙薬としてその一部が薬用に供された。現代の日本人の感覚からすれば、吐き気を催させる状況に思えるが、古代の人の感覚は理解できないものだ等と、妙に割り切ってはいけない。一寸だけ視点をずらしてやると、現代のあなたにも簡単に理解が可能なのだ。

 熊の胆(くまのい)という、年配の方にはよく知られた日本の古来の妙薬がある。字の通り熊の内臓を干して作った薬で、非常な高価で取引された。製法はミイラとさして違いはない。これを不潔だとか、おぞましいと感じる人はいなかったのである。
  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-06-01 15:47 | Trackback(2) | Comments(0)