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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその50

生産活動に見る縄文と弥生ー3 (通巻第354号)

 アイヌ語「 kar カラ 」については、アイヌ語学者の中川裕氏のアイヌ語辞典(千歳方言)で貴重な見解が述べられているので、
これに従いたい。氏の辞典の項目の順序とは異なった順で紹介するが、理解を早める為のものとして、ご理解頂きたい。

...カラ kar 【動2】~を摘(つ)む。~をもぐ。~を採(と)る ; 木の実、山菜、キノコなどを刃物を使わずに切り取ることをいう。(例文) kutci ku=kar ku=arpa kusu ne. クッチ クカラ クス カラパ クス ネ (コクワをとりに行くつもりだ。)
 (私の注釈) 自然の恵みをそのまま頂くと言うのが基本になる。刃物を使わずにというのが、重要なファクターになるのだ。
主に採集活動の意味を表す。
 ご覧のように、アイヌ語の kar には、大和言葉とは違って、動物を狩猟で手に入れるという意味は含まれない。狩猟に関するアイヌ語については、別の機会で取り上げたい。
 アイヌ語の狩猟に関する語彙が、なぜ大和言葉と同じ「自然の恵みをそのまま戴く」という流れの中の語彙にならなかったのかについては、やはり、カムイに対するアイヌ(人間)の観念の問題が横たわっているからだと思われる。祭り、送りの観念に関わるからである。ここでは、その事を指摘するに止(とど)めたい。狩猟にどんな言葉が当てられるのか、皆さんも予想を立てて置いて頂きたいとお願いをしておこう。

...カラ kar 【動2】①~を作る。 ②(毒など)に当たる。~で駄目になる。 ③(一種の代動詞的な用法で)~をする。
 【類義語】同じく「~をする」と訳されるキ ki の場合は、純粋にあらゆる他動詞の代用をするという、意味的には無色に近い動詞であるのに対し、カラ の根本的な意味は、「何かに作用する」ということであると考えられる。カラ が代動詞的に用いられる
場合は、このような意味にあたる場合に限られる。
 (私の注釈) この項で重要なのは、代動詞として使われる場合に限定条件が有るという、中川氏の鋭い指摘である。何かに作用して、働きかけをして、その対象に何らかの変化を生じさせるという観念が、限定条件付きの代動詞的「 kar 」の中核を成すということである。何でもかんでも kar を付ければ、「~をする」という他動詞になるというものではないのである。
 この「何かに作用して」という含意が人間が何か(主に大自然)に働きかけて、その何かを変化させるという、言わば「労働」・「生産」という有意(ゆうい =意図された)の人間行為を導きだす契機となる点に、十分な注意を払わねばならないのである。
 
 (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-08-21 10:25 | Trackback(3) | Comments(0)