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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその58

生産活動に見る縄文と弥生ー11 (通巻第362号)
 叩く・刻むの古アイヌ語が、「 tata 」であったのか或いは「 tatap 」であったのか、結論を出すことに焦って、また論理の飛躍を犯してしまった。問題が出される前に答えを言い始めたようなものである。ものの順序として、叩く・刻むの言葉が、なぜ「 tata 」ではなく「 tatap 」ではないかと疑ったのか、その思考の経路、つまり、そう疑うに至った経緯(いきさつ)を述べて置かなければならなかったのである。...改めてアイヌ語辞典を確認しよう。
 ▽チタタプ,ーピ citatap,-i 【名】魚の氷頭などを...(以下省略) 問題は、この語の説明の表記法である。この表記法は、
一般的に名詞の所属形を表すものである。アイヌ語の名詞の在り方で、概念形と所属形の別がある。所属形と言うのは、別の言い方では具体形と言い換えることもできる。具体的に説明しよう。
 親族呼称や身体部位の名前など、本体抜きには存在し得ないような名詞に概念形と所属形の別が有るのである。例えば、手や足などは、持ち主が居なければ、手や足だけが独立して空中に浮かんでいることはあり得ない。必ず誰かの手や足である訳である。
 先ず、手と足について中川氏の辞典を見てみよう。

▽テク , ーケ tek ,-e 【名】手 
▽テクコッ , ーチ tekukot , -i 【名】手くび ; 〈 tek 「手」 ukot 「つながっている」 hi 「ところ」。
 最初の 「 tek,-e 」が「~の手」の意味で、所属形である。次の「 tekukot -i 」の方は、 tek が概念形と呼ばれるもので、特定の誰かのものの意味でなく(所属形でなく)、概念としての「手」を表すのである。
▽チキリ ,ーリ cikir,-i 【名】(動物の)足 ; 韻文中・常套句(じょうとうく)中では人間の足も指すことがある。以下省略。
▲所属形の意義はご理解頂けただろうか。親族呼称や身体部位の名称の他にも所属形は用いられる。少し長くなるが、中川辞典の着物という語の説明に注目すべき視点があるので、これを見てみよう。
▽アミプ ,ーピ amip,-i 【名】着物 ; ← a= 「人が」 mi「着る」 p 「もの」。特定の人間の着物を指す時、或いはウサ usa
「いろいろな」に続く場合には所属形をとるが、その場合には語頭のア a = が状況に合わせて他の人称に代わる。
...この最後の部分に注目をお願いしたい。一般的に着物という場合はアミプというが、特定の誰かの着物と言う時は人の(a=)は使わず、「私の着物」なら「 ku=mip 」、お前の着物なら e=mip 、彼の着るものなら「 mip 」になると言っているのだ。
 お気付きのように、この段階で、既にこれは「所属形」ではなくなっているのだ。
 ☆ citatap,-i に戻ろう。なぜ氷頭の叩きに所属形が付くのか。誰か特定の人の、或いは、特定の存在にのみ属する魚の氷頭や
鯵が有るのか。氷頭の叩きに所属形など存在する筈が無いのである。 citatap-i の 「 -i 」は、所属形を標示するのではなく、
「 tatap 刻む(ci- べき)」「-i もの 」を意味したのである。   (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-08-29 09:25 | Trackback(4) | Comments(0)