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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその80

生産活動に見る縄文と弥生ー33 (通巻第384号)

《 nupur-pet 》という語句は、最初から「巫力の強い川」という意味で呼ばれ始めたのだろうか。それとも、「白く濁った川」という意味が元々の命名の由来なのか、その辺の事情を確認することは果たして可能なのだろうか。アイヌ語の研究者の人たちはどのような考えを「 nupur 」と言う語に就いて持っておられるのだろうか。著名なアイヌ語学者の中川裕氏に見解を求めよう。
...ヌプル nupur 【動1】巫力が強い。
 ▽ a=kor sapo tu nupur hussa re nupur hussa arukaykire  姉は強力なフッサ(治癒の息)を何度も吹きかけた
 中川氏は、ヌプル に「巫力の強い」の意味を充てておられる。「白濁した」などという観念は、氏の思考の中に入り込む余地も無さそうだ。しかし、この「巫力の強い」という観念が、いったい何処から生まれるのか、そこに眼を向けないと、「巫の力」=「霊力」そのものの意味さえ理解できないという事態に陥るのである。

 アイヌの先人は、巫力や霊力を眼に見えない空中の存在に止(とど)めず、何か、眼に見え音に聴き、肌で感じ取れる、ハッキリした実体を伴うものと見ていたようである。具体的に言おう。高い山は神々しく神秘な力をもつ存在である。山は、雲を湧き上がらせ、雨を降らし、風を巻き起こして聖地を侵す人間どもを脅かす。巫力と言うのは、恐らくこういった自然の猛威に対する古代人の恐れや、自然の大いなる力に対する憧れが、その観念の根底に横たわっていたに違いない。「白いものを吐き出す」、「雲を湧き上がらせる」、それが自然の猛威(つまり、霊力)の発露であり徴(しるし)であったのだ。

▲私は、自然に対する恐れが、古代人の脳裡(のうり)に聖性やら呪力やらの観念を造り出したと考える。「 Nupurpet 」に即して
言えば、川霧か川の濁りかは問わないとして、「白いものを出す・川」、これが原意であり、白いものを出すものは当然、巫力の強いものだということになる。これが登別の命名の由来であり、経緯(いきさつ)なのだと私は思う。

...▽ Nupurpet ヌプルペッの由来が視覚的なものだという証拠を、もう一つ2号証として提出しよう。それは知里幸惠さんの名作
アイヌ神謡集の「小狼の神が自ら歌った謡・ホテナオ」という作品に出てくる一連の語句・文章である。

 「 sir-nupur 神の力の強かった(時代)」と、「 sir-pan 神の力の衰えた(時代)」の対比の中で物語が紡(つむ)がれるのだが、
詳細は次回の楽しみにして頂こう。「色の濃い」= nupur と「色の薄い」= pan の意味の対比に「 nupur 」という言葉の秘密が
隠されているのだと予告だけしておこう。  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-09-21 13:45 | Trackback(2) | Comments(0)