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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその127

生産活動に見る縄文と弥生ー80 (通巻第431号)

 前回の辞典の紹介の記述に誤りが有ったので、お詫びして訂正したい。
☆  中川裕教授のアイヌ語辞典の「トゥナシ tunas 」の項目の品詞を、【動1】(一項動詞)とすべきところを、誤って【名】と
「早い」という言葉が名詞だと書いてしまったのである。うっかりミスで、言い訳のしようも無いのだが、少し前に、アイヌ語の文法には特殊性があって、いわゆる「動詞」と「形容詞」の区別が無いことを述べた後だったから、アイヌ語を詳しくは知らない方が、アイヌ語には「早い」という名詞があるのかとか、 tunas は「早さ」という名詞の意味も有るのだな、などと誤解しても困るので、改めて間違いだったことを明確にしたいのである。

▽ ところで、最近多くの方にこのブログに初めて訪れて頂いているので、この tunas が「速い」と訳されるのに、なぜ動詞1と品詞区分されるのか、少しだけ述べたい。一般的な品詞の考え方から言えば、流れが「速い」と言う時、その「速い」は形容詞であると区分される。だがアイヌ語の考え方では、 tunas には、「速く・ある(=速い)」という意味と「速く・なる」という意味の両義性が有るのだ。アイヌ語では、一つの単語が動詞として振る舞うこともあれば、形容詞の役割を担って登場する場合も有るのである。

▼ tunas の意味を、もう少し考えてみよう。「流れの速い川」を例に採って考えを述べたい。
...kanciwetunas は、「 kan-ciwe-tunas(-i) 上の・流れが・速い(・者) 」と分析ができ、川の表層の水流が速い者 = 水流の速い川という意味になる。ここでも、 tunas は、「流れが・速い」を意味するとも、「流れが・速く行く」と言っているのだとも、両様に解釈が可能なのである。 tunas は、その双方の意味を兼ね備えている訳で、曖昧な表現と言う訳ではなく、幅の広い表現機能を持っているのである。

○ tunas の語義に、その周辺から迫ってみよう。「 Kanciwetunas 」という言葉が、また参考になる。
 「 ciw 」というのは、水流などが激しく何かにぶつかる、突き当たることを意味する。中川氏の辞典では【動詞2】~を突き刺すと説明されている。この、刺すような、何かに激しくぶつかるような感覚が ciw には伴っており、これがまた、 tunas にも連なって来ると私は感じている。 tunas には、 paye にも通じる「勢いをもって何かに向かって行く」という意味が有るのではないか。それが次の追究の眼目である。大和言葉との関連を通して考えを深めて行きたいと思う。
  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2018-11-09 12:17 | Trackback(2) | Comments(0)