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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその182

生産活動に見る縄文と弥生ー135 (通巻第486号)
 抱合語の「 toyta 畑打ちする」について触れたからには、その複合語である「 e-toyta 」のことも俎上に載せてやらないと、不公平と言うものだろう。前に抱合語の説明に際し、佐藤知己教授の「充当態」の考え方を紹介したことがある。充当態に関する佐藤教授の説明のごく一部を紹介し、その時に例文として挙げた二つの文の訳文の対比を見ていただこう。

▽ (佐藤教授の充当態の説明)
接頭辞 e- , o- , ko- を動詞に付けると、...(中略)... e- ,o- は手段、着点を、 ko- は方向、手段を表す。...以下、省略。
 《充当態の例文と訳文》
...emo ka k-etoyta , mame ka k-etoyta a wa .
  私は芋も植えて、 豆も植えたよ。          ← 佐藤教授の訳文
  芋も私は栽培し、豆も育てたんだ。          ←  私の試訳文
...pise a-ewar wa a-porore kor simake .
 人が袋を吹いて、大きくすれば 膨らむ。        ← 佐藤教授の訳文
 浮き袋は、それに息を吹き込んでやると膨らむ(ものだ)。 ← 私の試訳文

▼ 「 e-toyta 」という語は、 toy-ta という抱合語(動詞)が、更に目的語を表す格助詞或いは手段などを表す接頭辞を抱合して出来上がる語彙である。何度も言うように、抱合によって、それまでに無かった新しい豊かな語意が生まれるという特徴がある。
 第一の例文では、佐藤教授は「土を掘る」の意味から飛躍させて、「(作物を)植える」という意味を導かれた。芋やら豆やらと作物を指事出来るという点に充当態や抱合語の役割を佐藤教授は認められた訳である。これは間違いではないのだが、もう一つ、パンチ力が、破壊力が足りないので、私は不満である。

○ 漢字の熟語で「栽培(さいばい)」という語が有る。国語辞典で見てみよう。
...さいばい【栽培】植物、特に野菜・果樹などを植え育てること。...と、ある。
 アイヌ語の「 etoyta 」は、土中に種や草の苗、苗木などを「植える」だけにとどまらず、更にそれに手間をかけて「育てる」ことまでを意味するとしないと、お百姓の労苦は表せないのである。適当な大和言葉の訳語を思い付かないが、植えるではなく、栽培するが etoyta の正しい訳語なのだと言うことにご賛同頂けるだろうか。
第二の例文の pise ...の方は、次回に繰り延べたい。   (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-01-03 15:05 | Trackback(3) | Comments(0)