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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその209

生産活動に見る縄文と弥生ー162 (通巻第513号)
 いま私たちは、「 tan 」や「 tap 」という言葉の源郷を探し求める長い旅を続けている。遠くに霞んでいたこれらの言葉が、少しずつ、くっきりとその姿を現し始めた所だと思う。旅には、「何処か遠くへ行きたい」という歌の文句のように、知らない町をさ迷うという楽しみ方も有るようだが、より楽しい旅に、有益なものをより多く得る旅にするためには、目的地の事前の調査も
必要だろう。その土地の魅力の在り処(ありか)を知り、早くそこに行ってみたいと思うことが、歩き疲れ痛み始めた脚を癒すことにもなるのだろう。一歩一歩「 tan 」や「 tap 」に向かって歩を進める態度も大切だが、飛行機にでも乗って、一足飛びに目的地に向かい、上空から周辺を見回してみるのも、一つの上手なやり方なのかも知れない。高みからの視点が、今は途切れ途切れに見える道の痕跡・点を、一本の連なった線をなす路(みち)として我々の眼前に浮かび上がらせてくれるかも知れないからである。

▽ 「 tan ・ tap 」と言う語の実際の使用例を辞典により観察してみよう。どんな意味合いで使われるのか。中川辞典で。
 取り上げる言葉は、取り敢えず tan 、tanpe 、tap 、tapne の4語としたい。多くの重要な視点を提供してくれるのである。
...タン tan 【連体】①この ; 眼前にあるものを指す。②物語中の用法として、目の前にいる相手に呼びかける場合に用いる。
...タンペ tanpe 【名】これ。それ ; 自分の手に持っているような、手近にあるものを指し示す。文脈的には、話の中で直前に出てきた事柄を指し示す。
(例文1) kunawpe sekor a=ye p tanpe ne wa . 福寿草というものは、これだよ。
(例文2) tapne kane ikemnu kewtum a=yaykorpare . tanpe kusu omanan pe a=ne ruwe ne wa
   こういう訳で憐愍(れんびん)の情を起こしたのだ。それ故、歩き回っているのだが、
...タプ tap 【副詞】このように。こうして。
...タプネ tapne 【副詞】このように ; タプネ カネ tapne kane 「このように」
(例文1) taan wen kamuy sirun wen kamuy an kusu tapne pirka aep a=e ka eramuskari
     この悪神、腐れ悪神のせいで  このように、おいしい食べ物を食べたこともなかった
(例文2) tapne kane tapne kane an pe これこれしかじかということ
 (私の註) 例文2の訳語は、「かくかく、しかじか」と訳すのが普通である。中川氏の訳は、現代語では認められる言い方だが古文では使われない。この「かく」は漢字で書けば「斯(か)く」となる。例えば、「ツアラツストラ、斯く語りき」等のように。

▼ 観察力の鋭い方は、これらの幾つかの短文だけで、 tan や tap の、「これ」や「この」の概念の枠組みには収まりきらない深い意味合いを感じ取られたことだろう。次回は、その枠組みにメスを入れることになる。 (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-01-30 14:27 | Trackback(2) | Comments(0)