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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその259

生産活動に見る縄文と弥生ー212 (通巻第563号)

 アイヌ語で蛍を「 ninninkep 」と言う。これは分析すると「消え・消え・する・者」となると考えられる。萱野茂氏のアイヌ語辞典でも「蛍」として「 nin-nin-kep-po 」という形で登載されている。この語彙の末尾の「 -po 」は、文法的には指小辞と呼ばれる、小さい愛らしいものに付ける接尾辞であって、結局は萱野氏も蛍を「消え消えするもの」と見ている訳(わけ)で、実はこの「消え消えするもの」と言う解釈は、知里真志保氏の説に従ったものなのである。

▽ しかし、アイヌ語で「 nin 」と言うと、例えば萱野辞典の記述を見ても、「 nin 」と言う語は「萎(しぼ)む」、「減る」、
「縮む」などを意味するとされ、必ずしも「消える」を意味しないのである。私は、このアイヌ語の nin には、「消え入る」と言う日本語が最も合致していると考える。実は、それよりも英語の単語の方に、もっと今の日本人に分かり易いものが有るのだ。
...「 fade 」と言う英単語がある。
 fade ①色褪(あ)せる。②(花などが)しぼむ、しおれる。③衰える。(病人などが)衰弱する。
 fade away だんだん色などが薄れ、消え去って行く。

▼ 「 nin 」は、強く輝くのではなく、闇の中で、細く光ったり消えたりする、蛍のそんな様子を表しているのだ。知里博士の説では nin は消えるだけを意味せず、また、光ることだけも意味しない。その双方の意味を nin-nin と言う重ね言葉で表していると言うのだ。私も、この考え方を支持する。
...nin-nin-ke-p = 「かそけく光り光りするもの」、でも良いし、「消えたり光ったりするもの」と言う訳(やく)も可とするのである。

◎ では、「縫う」と言う言葉は、何処で、この「消え消えする」や「(明かりが)点(つ)いたり消えたりする」という観念と結び付くのか、そう言う問題に当然なるだろう。針で布を縫う場面を頭に思い浮かべて頂きたい。
...針で縫われた糸は、布の表面に「出てきたり」布の裏側へ行って、糸が布の表側には見えなくなったりする。「縫う」と言うのは、そういう状態を表すものではないだろうか。物の間を折れ曲がりながら進むことも「縫う」と言う。

☆ 「山裾を縫うように汽車は進んで行った」などの表現は、こうした、姿が見えたり見えなくなったりの情況を表す言葉なのである。

  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-03-21 17:54 | Trackback(1) | Comments(0)