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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその281

生産活動に見る縄文と弥生ー234 (通巻第585号)
 「スナンカラ 」という昔からの言葉は、大和人には、その氏素性がもう良く分からない言葉になっていた。それが灯(あか)りを点(とも)して夜にする魚の突き漁であることだけは未だ理解が出来ていた。「カル」は「狩る・獲る」という意味だろうから、「スナン」と言うのは、きっと魚(うお)のことを言うのに違いないと。実際は魚を意味する「スナン」などという言葉は古い大和言葉にも有る筈が無かったのだが、大和人はスナン=魚だと思った訳である。
...sune スネ(灯り)の意味がもう分からなくなっていた。アイヌ語では、今でも「 sune 」は「ともし火」の意味の現役の語彙として使われているが、大和の人の生活では、もう松明(たいまつ = torch )などに切り替わっていたのである。

▽ 念のため、縄文語由来の「スナンカラ 」という語彙の語源の分析を行い、解説をして置こう。「スナンカラ sune-an-kar 」は
「 sune-an 火を点(とも)す 」と「 kar (魚を)獲る 」の合成語であり、全体として「灯火・漁」を意味するものであることは、もう説明を要しないだろう。

▼ 念には念を入れて説明しよう。「 sune 」と言うのは、捻った樺の木の皮( ci-noye-tat )を束にして手に持ち、それを燃やして作る灯りのことである。従ってそれは、名詞であるとともに、目的語をとらない「灯りを点す」という自動詞を構成する言葉でも有る訳である。ただ、「 sune-an-kar 」と熟する(熟語を作る)ときは、目的語(例えば ceppo )を取って他動詞となる。

◎ 萱野辞典では、「 ceppo sune-an-kar チェッポスナンカラ 」という語句が登載され、それには「小魚に火を近付けて獲る」という訳が付されていることは既に述べた通りである。しかし、この訳文だと「火を近付けて、それで魚を獲る」と解釈をされて、無用な誤解を招く恐れが有るのである。灯火の下(もと)で行う突き漁なのであって、魚を火で焼いて獲る訳ではないのだから。

☆ 「漁(いさ)る」という大和言葉の検証に進もう。こちらの方は、語の生成の途中で語意の大転換が有って、一筋縄では、その生い立ちを突き止められない、なかなか性悪(しょうわる)の語彙なのである。

★ 既に述べたように、「漁(いさ)る」という言葉は、さらに古くは「いざる」と発音されていたと考えられている。実は、この古い発音こそが漁業の古い概念を直接的に表すものであるからである。
...「いざる」と言う言葉は、実は、漁業と言うよりも、より広い概念の「海辺での漁獲・採集作業」を直接的に表す語彙なのである。海辺を行くと、岩場の水溜まりには小魚が跳ね回り、蟹の仲間が這い回り、砂浜には昆布やワカメが打ち上げられ、それは女や子どもたちにも食糧の調達の出来る、豊かな生産の場であった。ここで、「いざる」とはどう言う作業を意味したのか。先ず
大和言葉の変化の道筋を検証しよう。それがアイヌ語にも繋がって行くのである。
   (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-04-12 16:08 | Trackback(2) | Comments(0)