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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその311

縄文語ってホントに有ったの❓ーその21 (通巻第615号)
 陶器( suwe )に水を入れ、それを炉にかけると何が起こるか。陶器を発明した、縄文の早い時期に生きた人々は、目を見張ってそれを見たことだろう。水が沸き立ち、躍り上がりながら、何かものを言うのである。その湧き立つ湯の中に物を入れると、あの固くて「喰えなかった」木の実や植物の葉や茎が、歯の無い年寄りや小さな子どもまでが「食べる」事が出来るようになったのである。猪や鹿の肉も、筋や骨の部分さえ食べることが出来た。魚も、生では味わえない深みのある新しい食感を教えてくれたのである。しかも、それは美味であった。

▽ 土器と炉が造り出す燃える火の空間で、いったい何が起こっているのか。そこに縄文の人々は、恐らく神の働きと意思を見たのだろうと私は思っている。人間に生きる力と様々な恩恵を与えて下さるのだと。陶(すゑ)の中の湧き立つ湯に、神が立っておられると古代の人々は考えたようだ。
...くがたち(神盟探湯)という言葉をご存じだろう。古い時代の裁判の役割を果たしたと考えられる制度である。罪の有る無しの裁定を神の面前で、神の立ち合いで行うものと考えられたようである。湯を沸かすと言うのが、神の不思議な力を引き出す行為と直接にリンクしていた訳である。

▼ 実は、湯を沸かして物を煮る、食物を炊(た)くという行為は、古代人の寿命を、今まででは考えられないほど延伸させたのである。神が人々に栄養を与え長生き出来るようにしてくれたのである。当時の人々に「栄養」などという観念は無かった。ただ、「 suwe 」や「 suye 」に近似した音や意味を持つ、「 suke 」や「 suko 」という語のコロニーが、既に、早い時期から形成されていたようなので、後に続く弥生時代や大和の人々の語彙に、また、アイヌの人々の言葉にも「健康」や「丈夫に育てる」、「成長する」などの語意と言葉をプレゼントしてくれたとは言えそうである。
...健やか(= suko yaka )、「 sukup 成長する( sikup とも言う )」という民族を越えた二つの言葉は、同じ親から生まれた兄弟の言葉、少なくとも従兄弟(いとこ)の関係には立つのだろうと私は見ているのだが、果たしてあなたのご判断は...。

◎ アイヌ語に「 su 」という言葉がある。一般的には「鍋(なべ)」という訳語が充てられる。ただ、この「 su 」という語は、この「 su 」という発音で始まる語彙(複合語)はアイヌ語には数多く、「鍋」というたった一つの語意に収めてしまうのでは大変勿体(もったい)なく、いわゆる「役不足(やくぶそく=役目が実力不相応に軽いこと)」なのである。

☆ 経験豊富な最後の流暢(りゅうちょう)なアイヌ語話者・萱野茂氏も、うっすらと「 su 」という音の奥深い意味を感じ取られていたようだ。生意気な言い方で、萱野さんご免なさい。「 su 」は、加熱するという概念を中心に、様々な複合語を生産する、正にスーパー・ヒーローなのである。次回にこの辺をもう少し語ろう。
   (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-05-12 11:28 | Trackback(2) | Comments(0)