アイヌ語に今も残る「 mat マッ 女 」という言葉は、私の想定する「縄文語」の香りを遺(のこ)した古い言葉だと私は考えている。従って、同じく縄文語の血を引く大和言葉や沖縄方言に、その由緒(ゆいしょ)ある床(ゆか)しい音(おん)がひょっこり顔を出しても、何も怪しむに足らないのである。
▽ 大和言葉にこの「 mat 」の音を持ち、かつ意味も「女」を表す古い表現がある。前回にチラリと裾から脚を覗かせた、「小町」という言葉である。つい戦前の頃まで、ちょっとした大きな町になると、町内に一人や二人は「小町娘」と呼ばれる娘さんがいたもので、例えば小野川町という町であれば、その町一番の綺麗な娘であれば「小野川小町」と呼ばれた訳である。