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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその407

縄文語のかけらーその26 (通巻第711号)
 アイヌ語の「 nis 」が「天」という意味を持ち、同時に、それがそのまま「北」という概念を表すと言うのならば、論理的に考えれば、その対語としての「大地」と「南」を表す言葉は、同一の発音で語られる筈だ。
...その通りならば、正に非の打ち所の無い完璧な言葉である。だが、物事は常に人の思い通りには進まないものだ。アイヌ語に於いても沖縄方言と同様、東西を区分する観念を生む指標と南北を峻別する目印となる事柄とは、次元が異なるのである。
 結論から言えば、太陽や月の昇り、沈む方角を指標とする「東西」の観念とは異なり、また、北極星の在る天頂の位置から導き出される「北」の概念とも違い、アイヌ語に於いても、「南」の観念とそれを表す言葉は風の吹く方向に着目して形成されるのである。それは、沖縄方言の「はえ」にヒントが有るので、題材として「南風(はえ)」に関する私の以前の論考を見ていただこう。

▽ ...生産活動に見る縄文と弥生ー75(通巻第426号)...(再掲)
...アイヌ語の「 paye 」は、必ずしも「行く」を意味しない。「素早く、勢いをもって移動する」というのが「 paye 」という語の元々の意味だったということがご理解頂けたものと思う。「 arki 、arpa 」というのが「ゆっくりと移動する=歩く」だという事も、半信半疑ながら少しは頷ける部分も有るな程度には認めて頂けたのではと期待している。

▼ さて、大和言葉との関連を含めて、 paye という語彙の素性(すじょう=生まれ育ち)をもう少し明らかにしよう。発音の共通性から考えて、「速し、早し、囃(はや)す、生(はや)す、林(はやし)などの大和言葉との関連が気になる。少し語形が変わるものの
沖縄や西日本一帯で言われる「南風(はえ)」という風の名も、この検討のなかに入って来るだろう。その南風から行ってみよう。

◎ 南風(はえ)と言うのは、その文字通り南から吹く風のことを言う。「白南風(しらはえ)」と言えば、梅雨明けの頃に吹く風で稲の育ちを促す優しい風を指す。古代の人々は、雨や風などの自然現象に、狩りの獲物の豊猟や田畑の作物の豊穣を促す不思議な
力を認めていたのである...日本には稲荷信仰と言うのがある。「お狐さま」に対する信仰と言うより、稲光、稲妻に稲の稔りをもたらす力を認める信仰である。「稲妻(いなづま)」という語を辞典で見てみよう。
...いなづま【稲妻】空中に自然に起こる放電に伴って空を走る光。いなびかり。これで害虫が死に、稲が豊作になると言うので稲の夫(つま)に見立てたものか。また、別の古語辞典の参考の欄には、こう記述されている。
《参考》稲の夫(つま)の意。古代の信仰では稲の開花のころ稲妻が多いことから。これによって稲が実るとされていた。

...paye パイェから「はえ」への発音の変化については、既に「昔、ママはパパだった」の有名なキャッチフレーズを紹介して、その音韻変化については詳しく論じたから、もう皆さんには抵抗無く受け入れて頂いていると思う。
...以下、次回に。
     (次回につづく)


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by atteruy21 | 2019-08-16 12:44 | Trackback(3) | Comments(0)