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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその408

縄文語のかけらーその27 (通巻第712号)
 アイヌ語では南のことを何と言うのか。アイヌ語の「南」という観念は、自然界のどんな現象から導かれたものなのか。それが曖昧なまま、大して理由も示さずに大和言葉の「南風(はえ)」という言葉の細かな詮索の作業に私が入って行くことに、何かもどかしい、苛立(いらだ)たしい気持ちをお持ちになった方もおられよう。やはり、何を追求しているのか、我々がいったい、何処へ行こうとしているのかくらいは、皆さんの目の前にキチンと示さないと、あとについて行く身の皆さんには酷というものだろう。

▽ アイヌ語では、「南」の方角を「 pikata ピカタ 」と言ったのだろうと私は考えている。そして、それは、「南の風」という自然現象に由来し、より言葉の発生の原義に即して言えば、「南の風」と言うよりも「疾風(しっぷう=嵐)」を意味したのだと、そう私は考える。「 pikata 」という言葉を音韻的に分析すれば、「 pika + ta 」となると思われる。未だ「 -ta 」の意味を解析・特定するには至っていないので、pikata という語の語幹を成すと見られる「 pika 」という音(おん)を手懸かりに、この「 pikata 」という語の中核を成す意義を探り当てようと言うことになる。これが、我々の目的地である。なぜ「南風(はえ)」という言葉に拘(こだわ)るのか、それもおいおい理解されよう。

▼ 「 pikan ピカン 」という動詞(形容詞でもある)がある。中川辞典にお世話になろう。こう述べられている。
...ピカン pikan 【動詞1】すばやい ; 〈類語〉ニタン nitan 。
  ニタン nitan 【動詞1】(足が)速い ; 〈反対語〉モイレ moyre 。
ニタンは、専(もっぱ)ら足が早いことを指す。ピカン pikan は足も含めて、色々な動作について活発ですばやいことを指す。

◎ 生活実感を伴い母語に近い感覚で言葉を理解したと言われる最後のアイヌ語話者萱野茂氏のアイヌ語辞典に次の言葉がある。
...ピカンピカン【 pikan-pikan 】①身軽に動く。敏捷な動き(をする)。
Sonno ku-karkuhu pikan-pikan siri ku-nukar kor aynupata pewre pa wa sekor ku-yaynu .
本当に 私の甥の  敏捷な動きを 見ると  いいものだなあ若い者たちは、と私は思う。
②気が利(き)く。
...i-saptekur anakne sino pikan-pikan okkaypo isapte-p ne ,ko-eturenno iteki aynunumkeno apeetok wano niwa parorta
  給仕する人 は 本当に 気の利く 若者が 給仕する。 それとともに 絶対に人選びせずに 横座の方から庭の縁に
  an utar pakno isaptep-an pe ne .
  座っている人たちまで給仕するものだ。

☆ 大和言葉の「疾風(はやて)」について述べたことがある。南風(はえ)という言葉も強い風を意味するもののようだ。とすればアイヌ語の「 pika 」という音が素早いを意味しても何ら不思議は無い訳である。  (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-08-17 12:33 | Trackback(2) | Comments(0)