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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその445

縄文語のかけらーその64 (通巻第749号)
 山上憶良・長歌「男子名は古日に恋ふる歌」語源解釈(続きーその5)
...古日の口にした「うへはなさがり=ボクの側を離れないでね」と言う言葉の逐語的解析で、ボクの側「うんへ= un-he 」という
語句の真ん中に在る「ん」の音(おん)が言葉から抜け落ちてしまった事に就いて、キチンと理由を説明しないと、この語源解釈は成立しない。「うんへ」から「うへ」への、深い谷間に架かる懸け橋を渡してやらねば、あの古日は恋しい両親の許(もと)に駆け出して行くことが出来ないのである。
▽ 私は以前の論考で、「ん」の音を脱落させる日本語の癖を論じた。それが参考になると思うので、一部再掲したい。
 《通巻第495号「生産活動に見る縄文と弥生ー144》
...平仮名の「ん」という音(おん)は、それまでは字として表記されることはなく、発音上で現れるだけの認知されざる日陰者であった。あの有名な弘法大師・空海が、仏典の翻訳に当たって必要に迫られて考案し、そして最後に出来上がったのが、「ん」と言う文字であったと言うのは、余り知られていない。
▼ もう一つだけ、注目すべき事実を述べよう。その「ん」という発音が、初めのうちこそ有っても無いもののように無視されるという扱いを受けてはいたのだが、終(しま)いには、その「ん」という音(おん)自体も、言葉の発音からさえ消し去られたという悲しい運命に追い込まれたと言うことを...。
...懸想(けさう)という、これも仏教から発生した言葉がある。ちょっと古語辞典を覗いてみよう。
◎ けさう【懸想】(名詞)〔「けんさう」の撥音「ん」の表記されない形 〕思いをかけること。恋慕うこと。
〈例文〉『伊勢物語』 「むかし男ありけり。懸想じける女のもとに、ひじきもといふ物をやるとて...」
〈現代語訳〉 「昔、一人の男がいたという。思いをかけた女のもとに、ひじきも(=ひじき)という物を贈るというので...」
...この「懸想」という言葉が、どんな風(ふう)に発音され、どう発音が変化して行ったのか、興味深いものが有るのだ。
分かり易さを優先して、現代人の耳で聞いた場合、それがどう聞こえたのかを再現してみよう。
☆ 「けん・さん」→「けん・さう」→「け・さう」→「け・そう」という流れ。この流れがこの言葉の辿った道程であった。
...「ん」という音は、「う」という音に変わったり、終(つい)には発音からも消え去るという運命に遇(あ)ったのである。
 なお、「想」の字が「さん」と読まれたり「さう」という発音に変わる事に違和感のある方が多いだろう。少しだけ漢字が中国から日本にもたらされた時のことに触れよう。
...現代の中国語の「想」の読み方は、「 xiang ・シアング 」と言い、語尾の「 g 音」は日本人には殆ど聞こえず、「シアン」ないし「シャン」と響く。
 しかし、この「懸想」という用語を仏僧たちが輸入した当時の中国人の発音は、「シアング」ではなくて、恐らく「サング」に近いものであったと思われる。当時の留学僧の耳には、「懸想」の語は「けんさん」と聞こえた筈だと言うのが私の考えなのだ。
★ 「うんへ」の「ん」が落ちて「うへ・ボクの側」になったと見る私の考えにご賛同頂けるだろうか。
...古日君は、「うん」の懸け橋を通って、懐かしい恋しい両親の許へ駆け出して行けた、そう私は信じている。(次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-09-24 11:56 | Trackback(32) | Comments(0)