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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその489

縄文語のかけらーその108 (通巻第793号)

 古事記に出てくる歌の「さねさし」という超難解の枕詞を巡って、アイヌ語の「 upsor ・懐(ふところ) 」という言葉を、私は問題を解く鍵となる言葉として俎上(そじょう)にのぼした。大和言葉の「さね」の原意に連なると思うからである。この言葉は、特に重要な語彙として、アイヌ民族の古典文学にも度々(たびたび)登場する。有名な金田一京助博士と、ユカラの優れた伝承者の金成(かんなり)マツさんとの共同の仕事、アイヌ叙事詩ユーカラ集に眼を通して見よう。

▽ アイヌ叙事詩ユーカラ集〈Ⅰ〉 PON OINA (小伝) 第三章「契り(ちぎり)」
...この小伝はアイヌの英雄神・アイヌラックルの物語である。粗筋を予め説明して置くのが分かり易いと思うので述べると...
 兄神のもとで美しく成長した姫神の住むコタンに、主人公の少年英雄が訪れる。遠近の神々を招いて酒宴を催していた兄神は、
真の名を伏せて酒宴に加わった主人公の、その立ち居振舞いに惚れ込み意気投合した。酒の入った勢いもあり、少年神は、美しいことで評判の妹神に酒を一差し振る舞いたいと兄神に申し出る。
...実は、妹神には赤ん坊の頃からの親の決めた許嫁(いいなづけ)の神がいたのだが、妹神にとっては、只の一度も会ったこともない遠い存在にしか過ぎなかった。妹神は、許嫁に気を遣って断ったのだが、主人公をすっかり気に入った兄神は、許嫁の事も忘れて、礼儀だからと妹にその酒を受けるよう強(し)いる。
 少年神が帰ったあと、酒宴にも招かれず腹を立てていた許嫁の幌尻の神が雷鳴と共にコタンを襲い、嫉妬に狂って妹神に死ぬほどの(性的)暴行を加える。

▼ shinta-ka wano aikoresu  tambe kusu sembirkasi aeyaitursakka katkemat buri kamui buri akor awa ,
 揺り籠の上から 約婚の中で育ち それゆえ 蔭ながら 身を無垢に保ち 淑女の風(ふう) 神の風を 私が持していたのに、
hemanta rehe ochiu ne wa kinin ne wa chibiye neyakka oar ponnoka  katu ka isamno
 何事の 名か 姦通 だの 淫乱 だの 悪罵 であっても 全く 少しも その形跡も ないのに
arwen itak ikoshuyekar , menoko shiwentep ane manu kusu senne saure iyekarkar .
 極悪の言葉を 私に振りかけ、 かよわい女の 私であればとて ずいぶん酷く 私を扱った。
Eepakita huchi-upsorka totto-upsorka ikochari  ruwe-okai awa ,
 かつまた 祖母のふところ 母のふところも めちゃめちゃに された事であったのに、...

◎ 次回で難しい語句の説明を含め、詳しい解説をしよう。upsor の意味する範囲は広く深いのである。日本語で言う懐よりも
ずっと多くの意味が有るのだ。それが「さねさし」へと続く訳である。
   (次回につづく)

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by atteruy21 | 2019-11-07 11:31 | Trackback | Comments(0)