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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその577

縄文語のかけらーその196 (通巻第881号)
 テコナ(手児名)と言う名の語義やその語の成立の過程を、現代のアイヌ語や沖縄方言から読み解こうなどと言うのは、もともと無理が過ぎるのではないか。そう、多くの方が思われるに違いない。それは当然の疑問である。
...しかし、私がそのアプローチの仕方に拘(こだわ)るのには、それなりの理由が有るのである。と言うのは、古代の古い言い回しは、特にアイヌ語の場合には、前にも言ったように、それが生活用語として使われなくなって久しいため、言葉や語法の様々な色合い微妙な言い回しが失われて、言葉の持つ表情が乏(とぼ)しくなってしまったのである。

▽ 手児名と言う名のアイヌ語による分析では、それは「 tek - kone - ya 」となり、これを直訳すれば「手が・粉になる・人」となる。このままでは、語の構成に矛盾と混乱が有るように見える。私には、此処には言葉の「失われた環= missing link 」が有るのではないか、そう思えるのである。
...kone ではなく、 kona と言うアイヌ語の古語が有ったのではないか。それも「働き者」とか「名手(めいしゅ)」などの語句に繋がるような...。今ではアイヌ語では喪われてしまったけれども...。

▼ 一方、大和言葉の方には、アイヌ語で失われた「コナの音を持ち、働き者の義を表す言葉」が今でも残っているのだろうか。
...こな・す【熟す】(他サ四)
 ①砕いて細かにする。粉砕する。 《例文》楮(こうぞ)を熟(こな)して料紙漉(す)きけるとき...
 ②けなす。悪く言う。  《例文》こなし こなされ、かくては堪(こら)へきれず
 ③自由にあしらう。思いのままに扱う。
...こな・た【熟田】(名詞)よく耕された田。

◎ どうも「こな・す」の意味の ③ 辺りに大事な語義が隠れていそうだ。そこで、ここは念のため現代語の方も見て置こう。
...こな・す[五他]
 ①細かく砕く。 ②食物を消化する。
 ③物事を処理する。  《例文》仕事を一日でこなす
 ④習得して自在に扱う。要領をおぼえて自由に運用する。 《例文》英語を自由にこなす
 ⑤見くだして扱う。

☆ 現代語の「こな・す」の方は、生き生きした表現に溢れている。生活用語の強みである。実は、アイヌ語でも明治の末期頃迄は、未だ様々な言い回しが残っていたようなのだ。手児名の美しさの秘密に言葉の上でも肉薄して来た。残りのあと一歩は次回に残そう。
    (次回につづく)

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by atteruy21 | 2020-02-03 10:39 | Trackback | Comments(0)