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アイヌ語と日本語の中に残る「縄文語」ーその1642

縄文語のかけらーその1262 (通巻第1964号)

 ケナシ( kenas )と言うのは一体どんな場所か。アイヌの民話に登場する「木原の姥= kenas kor unarpe 」と言う妖怪に自らの出自(しゅつじ=出身・生い立ち)を語って貰おう。
 🌀 知里真志保著【アイヌ民譚集】の「えぞおばけ列伝」に、 20 .木原の姥(うば)と言う噺が載っている。
 ...その一部を引用して、皆さんにも「ケナシ」=木原の実像に迫って頂こう。

▽ 木原はどんな土地柄か ❓
 ...胆振(いぶり)および日高の沙流地方にケナシコルウナルペ(木原の姥)というお化けがいて、これがいつも編みかけのこだしを冠ったように髪の毛をざんばらに振りかぶって出て来る。沙流地方にこんな話がある。
 昔むかし、ある男が山狩りに行くと、熊の子が一匹...(中略、このあと熊の子を操って人を襲わせる木原の姥の噺になるのだが、長いので省略)

▼ 編みかけのこだし(手提げ袋)を被ったような怪しの妖怪
...この話の中に出て来る編みかけのこだし(エチャコルサラニプ)を被ったように髪をおどろに振りかぶった怪しの女が、この地方で言うケナシコルウナルペだ。手塩(てしお)ではそれを「イワメティエプ(山の魔)」と呼び、やはり編みかけのこだしを被ったような髪形で出て来る。
 ⭕ 山狩りに行くと、このお化けが熊をけしかけるので、善良な心を持った熊も時に人間を襲うことがあるのだと言う。

◎ 木原の姥の棲み處(すみか)はどんな所 ❓
...このお化けは木立の空洞(ほら)の中などに棲(す)んでいるので、そういう木の傍に野宿するものではないし、また、川岸の柳原の端にも棲んでいるので、そういう所にも泊まるものではないと言う。
 🔷 何やら、木原の姥の住まいの様子が仄(ほの)見えて来たようだ。

☆ 木の虚(うろ=洞)や、川原の洞穴
...アイヌ民族の古俗や沖縄の古い習慣では、死者を天然の洞窟や川原の荒れ地などに放置して風葬などにした。山姥(やまんば)や鬼婆(おにばば)はそういう地に棲む妖怪であり、アイヌの木原の姥もこの系譜に連なる。また、三途の川(さんずのかわ)の奪衣婆(だつえば)も同じくこの線上に立ち現れる。
 🔶 木原は、只の木の生えた原っぱなのではなく、これらの妖怪の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する空間だったのである。
...そこで、それは実際の場所としてはどんな土地柄になるのか。続きは次回に。 スイ・ウヌカラ・アンロー

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by atteruy21 | 2023-01-21 14:38 | Trackback | Comments(0)