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縄文語のかけらーその188 (通巻第873号)
 古代大和の婚姻や配偶者選びに、「よばひ」と言う制度があった。時代が下って江戸時代以降には、この「よばひ」と言う語に「夜這(よば)ひ」と言う字を充てることが多くなった。夜這いをすると言うと、夜、男が女の寝所へ忍び込むことと受け取られ、当時の農村の若者の間の男女交際の実態と符合するものだから、「暗闇の中を這って女の所へ行く」が語源だと考えられていた訳である。だが、それは誤解であって、実は語源は卑俗なものでなく、床しいものであった。

▽ 古語辞典 「よばひ」
...よばひ【呼ばひ・婚ひ】(名詞) ①結婚を求めて名を呼びかけること。求婚すること。
 ②[「夜這ひ」とも書く] 夜、男が女の寝所へしのびこむこと。

▼ 古語辞典 「よば・ふ」
...【呼ばふ】[四段動詞「呼ぶ」の未然形「よば」に上代の反復・継続の助動詞「ふ」が付いて一語化したもの]
 ①何度も呼ぶ。呼び続ける。 《例文》遥(はる)かの底に よばふ音(こゑ)ほのかに聞こゆ (今昔物語)
 《現代語訳》はるかな谷底から(人の)何度も呼ぶ声が、かすかに聞こえる。
 ②言い寄る。求婚する。

◎ 江戸時代の辺りから明治の終わりくらい迄、【夜這い】を巡る農村の若者の「武勇伝(ぶゆうでん=戦いの自慢噺)」語りは、様々なタイプがあり、一つの娯楽にもなっていた。
...音を立てずにオヤジ殿の監視の眼を盗んで娘の部屋に忍び込む方法、逆に既(すんで)の所で家人に見つかってトッチメられた噺、等々。抱腹絶倒、夜が明けるのも気付かず話題が続くのだが、時の経過によって「よばふ」の意味は変遷を遂げて来たのだ。

☆ 娘の許(もと)に忍び込むと言うと、何やら後ろめたい感覚が有るのだが、誤解を避けるため、念のため言うと、それは古くは社会公認の、開けっ広げの風俗だったと言うことである。本来は、例えば娘の父親が、忍び込んで来た若者を首根っこを押さえてトッチメた...などと言う話になれば、これはオヤジ殿の方がルール違反で、トッチメられるのは逆にオヤジの方なのである。

★ 婚期を迎えた娘が、色々な若者と自由な性関係を結ぶ事は社会の公認事項であった。不道徳なことでも何でもなく、それこそ「筑波の神の禁(いさめ)ぬ業(わざ)ぞ...」とされた訳である。父親と言えども、勝手に娘の恋路を妨げてはならなかった。
...言わば娘の人権は守られていたのである。忍んで来る相手の男が気に入らなければ、娘には拒否する権限も認められていた。
 男が娘の意思を無視して無理に性関係を迫れば、男は、後で地域の若者たちから厳しい制裁を受けることになる。
    (次回につづく)

by atteruy21 | 2020-01-26 12:26 | Trackback(7) | Comments(0)