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縄文語のかけらーその199 (通巻第884号)
 わが故郷に程近く、市川真間に古い昔に生きたと言う、伝説の美女・手児名の物語に長い間付き合って頂いた事に心から感謝を申し上げたい。
 手児名その人に就いての噺は此処までとして、手児名の生きた地である真間と言う土地の名義について、その表す意味の厳密な検証をしたいと思う。

▽ 物の本によれば、地名に付けられた「まま」と言う言葉は、主に「崖地」を表すことが多いようだ。だが、その「崖」と言う意味の他に、少なくとも市川の真間に関しては、もう一つ、大切な意味として「波静かな入江」と言う語義が含まれると、私にはそう思われるのだ。
...*葛飾の 真間の入江に うち靡く 玉藻刈りけむ 手児名し思ほゆ

▼ 「ま・ま」と言う語句は、「真(ま=真の、本当の)」という語と「澗(ま=入江、港)」という二つの語彙から構成された複合語で、その意味する所は「波静かな・入江」となる。入江や湾を表す地名の例としては「大澗」や「大間」という地名が日本各地に散在する。しかし、こう言うと、「ちょっと待ったア ! 確かに《澗(ま)》というのが入江や湾を表すのは分かった。だけど、波の静かなという意味は、いったい何処から出て来るんだ ? 」という疑問の声が上がるだろう。その通りである。

◎ 「真(ま)」からも「澗(ま)」からも、「波の静かな」の語義は導かれない。そうではなくて、敢えて言えば「澗(ま)」の方に「波の無い所」と言う意味が初めから含まれているのだ。入江と言うのは、外洋の大波が入って来ないように岸辺などで囲まれた内湾を言うのだから、波が静かなのは当たり前の事なのだ。

☆ この関係を、兄弟の言葉であるアイヌ語で、同じく「入江」や「湾」を表す moy と言う言葉で再確認しよう。実際の語の音は違っても、言葉を形成する観念は全く同一なのに驚かされる。
...アイヌ語で言う入江や湾は、 moy モイと言う。これは「 mo 」と「 -i 」の二つの語彙で構成され、「(波が) mo 静かな 」「 -i 所 」を表す語句である。

★ 実際のアイヌ語の地名には、オタモイ岬の「オタモイ」が有るが、これは「 ota 砂の・ moy 入江 」の義であることは、言うまでも無い。
...真間の地名が「本当に波の静かな所」を意味すると言うことまではご理解頂けただろうか。
 澗や間は、入江や湾を、そして舟の出入りする港を意味する。次回は、何処の港に立ち寄ろうか。
    (次回につづく)

by atteruy21 | 2020-02-06 15:45 | Trackback | Comments(0)