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縄文語のかけらーその245 (通巻第930号)
 法度(はっと)という言葉は、普通に考えられるような漢語由来のものではなくて、日本列島の古くからの住人の間で生まれた固有の「 はっ・ hat 」という言葉に、似た意味を持つ漢字を当てて成立したものではないか。...それが私の基本的な考え方である。
▽ アイヌ語に「 hattoho an =禁止する 」と言う成語が有る。実は、この成語の存在こそが私の法度起源論の土台を支えるものなのである。アイヌ語の「 hattoho an 」と言う語句が、日本語の「法度(はっと)」と言う言葉を借用して出来上がったと考えるのは、物の道理に合わない、理屈が通らないのである。借用するにも借用には法則が有るのである。これから、それを証明して行く訳だが、長い道程(みちのり)になるので、一歩づつ進んで行こう。

▼ 外来の文化や言語を採り入れる場合、例えば言葉を取り入れるとき、物や事柄の名詞は最も採り入れ易い。「 hatto 」と言う言葉に即して言えば、法度(=禁令)は名詞であるから、借用しやすいのだが、「禁止する」と言う動詞になると、そう簡単にオイソレとは取り入れにくいのである。脳の言語野の働きが、名詞の置き換えは比較的簡単に出来ても、動詞をうまく置き換え使いこなすことには向いていないと言う事であるらしい。世界のどの民族にも共通の傾向のようなのだ。
...名詞にしても「 hattoho an 」の「 hatto-ho 」のように、わざわざ所謂(いわゆる)「所属形」の形にして取り入れるようなやり方は例を見ないし、名詞と動詞の複合語句は一纏まりの借用語とはなり得ないのである。

◎ この事は改めて詳述するが、先ず「 hattoho an = 禁止する 」の分析から始めよう。大和言葉では、「禁止する」を漢語ではなく大和言葉で言うと何と言うだろうか。
...禁(いさ)む ←「イサム」は、手で行く手を遮(さえぎ)って相手を制止すること...

☆ 古語辞典 いさむ  * いさむ 【禁む】禁止する。
《例文》伊勢物語 七十一 ...昔、をとこ、伊勢の齋宮に、内の御使にてまいれりければ、かの宮にすきごと言ひける女、
わたくしごとにて...ちはやぶる 神の齋垣(いがき)も 越えぬべし 大宮人の 見まく欲しさに
 をとこ、...戀(こひ)しくは 来ても見よかし ちはやぶる 神の禁むる 道ならなくに
《現代語》昔、ある男(在原業平)が伊勢の齋宮(いつきのみや)に、帝の使いとして参ったところ、その斎宮で好色な噺をしていた女が、齋宮の女房としてでなく、その女一個人として、(自分の気持ちを歌にしてこう詠んだ)
 ...聖なる神の神社の垣根さえ越えて、外へ出て行ってしまいそうよ。宮中にお仕えする方(業平)が見たいばかりに...
...それに対し男が、「恋しければ、やって来て逢いなさいよ。男女の仲は聖なる神の禁止することではないものを...。

★ 平安時代一のプレイボーイ・在原業平の魅力に魂を奪われた斎宮の女房...まあ、そんな噺である。
...寄り道したが、次回は法度の詮索に邁進したい。   (次回につづく)


# by atteruy21 | 2020-03-24 14:30 | Trackback | Comments(0)

縄文語のかけらーその244 (通巻第929号)
 * 機(はた)という言葉
...アイヌ語の「 tese 編む・織る 」という言葉は、実は、日本語で言う「布を織る」という観念とは少し範囲のずれた、敢えて言えば意味の異なる語彙なのである。織る、編むの目的・対象となる、作る製品の種類に違いが有って、「 tese 」の場合はその編み上げるものは「ゴザ( kina )・敷物( toma )の類いである。

▽ だが、「 tese 」という行為そのものは、繊維などを組み合わせ繋げるという意味で日本語の織るや編むの観念と変わる所の無い、敢えて言えば、意味的に重なるものであると言い得るから、材質の違いは措(お)いて此処では語の観念の比較の対象にしたい。
...古語辞典 機(はた)
 はた【機】(名詞)手足で操作して布を織る道具。また、それで織った布。

▼ 日本語の「織る・編む」は、機械(機織り機)を使って縦糸と横糸を交互に組み合わせ、布状の物や紐を編み上げる訳で、これはアイヌの人たちが呉座を編む( i-tese )ことと質的には何の違いも無い訳である。
...布と呉座(ゴザ)の材質の違いがどうしても気になると言う方には、アイヌ民族の着物「 attus ・アトウシ 」の噺をしよう。

◎ アトウシ(厚司= attus )と言うのは、オヒョウニレの木の皮から採った繊維で織った上着の事である。この厚司を織ることを萱野氏の辞典では以下のように言うと説明している。
...attus sitayki =厚司を織る。
 シタイキと言うのは、実は「叩く」「殴る」と言うのが基本義・原義なのだが、「織る」という意味にも使われるのだ。
 萱野氏は「シタイキ」の項目で、
* シタイキ【 sitayki 】①叩く、殴る。
            ②織る。 アットウシ シタイキ=厚司を織る。へらで叩いて織るのでこう言う。...としておられる。

☆ 布を織る、ゴザを編むなどの観念が、換言すればそう言う行為を表す言葉が、大和言葉に於いてもアイヌ語にあっても、案外似たような形で形成されて来たことが分かる。アイヌ語の「 tese 」の相棒に大和言葉の「 はた 」を充てることに特にご異議は御座いませんか。

★ 次回は「 hattoho an 禁止する 」の説明に戻り、決着をつけた上で次の話題に進みたい。

     (次回につづく)

# by atteruy21 | 2020-03-23 10:54 | Trackback | Comments(0)

縄文語のかけらーその243 (通巻第928号)

 古代に生きた人々は、木や草の皮や蔓(つる)を叩くなどして繊維質( fiber )を採りだし、バラバラにならぬよう揃(そろ)えてロープや布のような組織( tissue )を手に入れた。そして、更にそれを織ったり編んだりして衣料製品を造り出した訳である。
...アイヌの先人たちは、一連のそうした作業を表す観念に「 tus 」やら「 tes 」などの音(おん)を与え、それで出来上がった物を「 ninu ニヌ 」=布(ぬの)と呼んだようだ。アイヌ語で「 ninu 」と言えば、実は布そのものを指すと言うより、直接的には「縫う」と言う意味に現代アイヌ語では取られているのだが、恐らく、より古い時代には「 ninninu ニンニヌ 」と言う語が専ら「縫う」を表し、「 ninu 」の方は出来上がった衣料や反物(たんもの)を指す分業的表現をしたのだろう。

▽ 「 ninninu ニンニヌ 」は...「姿が見え隠れする」と言う反復語
...縫うと言う動作は、どんな状態を表すか。運針(うんしん)と言う教科が戦前の小学校の授業に有ったと言う。女の子の重要な仕事とされた「裁縫」の基礎練習で、針と布を持って縫い物の練習を女の子だけが延々とさせられたと言う。針は、布の表側と裏側を行ったり来たり、姿が見えたり隠れたりする訳である。

▼ 実は、 ninninu は「 nin 消える 」と言う語の重ね言葉であって、「消え消えする=ついたり消えたりする」と言う意味で、「縫う」と言う言葉に即して言えば、 ninninu は「(針の)姿が見え隠れする」と言う意味になるのだ。
...山々や森の間を縫うようにして汽車は進んでいった。この表現では、汽車は森の間を見え隠れしながら進んだのである。
...ninnin と言えば、蛍(ホタル)のことを、アイヌ語では「 ninninkep 消え消えする者」と呼ぶ。ホタルは光を点滅させて異性を呼び合うから、この名が付いたのだろう。

◎ また、道草を食ってしまった。ところで、「布を織る」や「紐を編む」などの意味にアイヌ語では「 tese 」や「ninninu 」などの音を充てる。大和言葉に於いては、いったいどんな言葉が充てられるのか。
...皆さん、もうお察しの通り、それは「 hat 」という音を頭に戴(いただ)く言葉である。

☆ 「はた」と言う音がそれである。
...幡、機、旗など色々な漢字が充てられる多機能の、活動的な言葉である。次回以降でどんな展開が待っているのか、楽しみに待って頂きたい。

    (次回につづく)

# by atteruy21 | 2020-03-22 15:10 | Trackback | Comments(0)

縄文語のかけらーその242 (通巻第927号)

 アイヌ語の「 tes 」には、私の主張するような「バラバラにならぬよう繋ぎ止める」などと言う意味があるとは公認されていない。単に「すがら(魚を導くための木杭の列)」と言う名詞の意味だけが認められているだけである。
...だが、これは時の経過などによって元々の意味が忘れ去られただけの事に過ぎない。だから、現在に残された語彙のごく狭められた意味からさえ、これを慎重に分析的に捉え直すことによって、 tes の語が曾て持っていた生き生きと躍動する意味合いを改めて今日に復原させることも可能なのだ。

▽ tes に関連する言葉、 tes と言う音(おん)を含む語彙に眼を向けると...
...アイヌ語の常用語に「 tese ・テセ 」と言う動詞がある。
《萱野辞典》に...テセ【 tese 】(敷物などを)編む。...とあり、一方の
《中川辞典》には...テセ tese 【動2】(ゴザなど)を織る。...と説明される。

▼ 編むと織ると、幾分か意味合いが異なるのだが、共に衣料などを作るという意味で用いられる。これらの衣料や布などを作るという作業の在り方に、 tes と言う語の成立の秘密が隠されていると私は思うのだ。
...人は、木の皮や草の蔓から何らかの方法で繊維を取りだし、それがバラバラにならぬよう叩いたり漉(す)いたりして、布やら紙やら糸やらを作り、敷物やゴザを編む訳である。

◎ 「 tese 編む・織る 」と言う言葉が「物がバラバラにならぬよう...」と言う観念の流れの中で形成された、という私の考え方に貴方のご賛同は頂けただろうか。
...さて、「 tes 」の語感に貴方のご理解が行った処で、前からのお約束の通り、「 hat 」との異同、その意味の違いと意味の重(かさ)なりの兼ね合いの噺をする段階になったのだろう。

☆ 「 hat 」も又、「物や人がバラバラにならぬよう...」と言う脈絡で語られる言葉である。いまだに確信が持てないで居るのだが、こちらの方は「 tes 」と較べて、「人(の心)がバラバラにならぬよう...」と言う人的・心理的要素を含んだ観念なのではないか、そんな気がしている。或る事柄に対し、人の心や行動がバラバラにならぬよう規制を加える。 tes が、物の在りように関わる規制であるのに対し、 hat は人の行動を縛るものを言うのではないか。

★ これが、人の行動を規制する「法度」と言う言葉に「 hat ・はっ 」の音(おん)が含まれる所以(ゆえん)である。
     (次回につづく)

# by atteruy21 | 2020-03-21 15:37 | Trackback | Comments(0)

縄文語のかけらーその241 (通巻第926号)
 ハップンカラ =葡萄蔓(ブドウ・ヅル)というアイヌ語の説明から、思いもかけずに、日本の江戸時代の法度(はっと=禁令)という言葉の噺になった。この一見して漢語由来の「法度」という語彙が、漢語の借用語などではなしに、何と、古い日本列島人の言葉に由来する「 hat ハッ 」という言葉、或いは音(おん)を源にしているのだと...。

 * 「法度・ハット」の御先祖の言葉は縄文語 ?...そんな非常識な ‼
...「 hat ハッ 」と言う音が、葡萄の実を表すと共にブドウ・ヅルを意味し、「物をバラバラにならないように繋ぎ止める」と言う別次元の観念を示す迄に終(つい)には発展を遂げた。そう言う噺に、前回迄で何とか漕(こ)ぎ着けたと思う。

▽ 「徴(はた)る」等と言う黴(かび)の生えた古い言葉まで持ち出して、人の心と行動を縛る意味合いがこの「はた」と言う音に含まれるのだと言う所まで、法度(はっと)の意味と音に至るまで、あと残すところ僅かの距離にまで迫った。
...そこで、皆さんに思い出して頂きたい噺がある。人や物の動きを規制する、そんな意味合いを持つ古いアイヌ語や大和言葉に共通の音の噺である。

▼ 「 tes ・テシ 」という言葉
...発音の上では「 hat 」と言う音には関わらないのだが、言葉の意味の上で「 hat 」の語に極めて似ていて、「 hat 」と言う語彙の原義を考える上で大いに参考になる「 tes 」と言うアイヌ語がある。実は、これは大和言葉の弟子(でし)や丁稚(でっち)という言葉にも繋がるものなのだが、前にも紹介したので繰り返す事は止めよう。

◎ 萱野茂アイヌ語辞典 テシ 【 tes 】すがら ; 魚を導く為の木杭にヤナギの柴を千鳥掛けにする。
...何だか分かったような解らないような、変な説明文だが、魚を罠に追い込む魚道の事である。前にこの tes を説明した時は、英語の runway や幌馬車隊の噺をしたのを憶えておられる方もあるだろう。

☆ 私が子供の頃、ローハイドと言うテレビの超人気映画があった。アメリカ西部の牧場からアメリカ大陸を横断して東部の街までカウボーイ(牧童)たちが牛を逐って旅をするのだが、その映画に登場する魅力溢れるカウボーイたちの物語だった。当時は未だ駆け出しの俳優にしか過ぎなかったクリント・イーストウッドは、この映画でスターダムに上り詰めたのである。
...殺到する牛の群れを何とか牧場の柵の中へ追い込むための獣道(板張り柵)を runway と言う。この「 runway 」は、飛行場の滑走路等を言うが、元々は牛や羊を誘導する獣道を言ったのである。滑走路も獣道も、獣や飛行機がそこを飛び出してしまっては安全が保てない訳である。 tes や hat は、どう意味が重なるのか、それは次回に。
    (次回につづく)

# by atteruy21 | 2020-03-20 13:07 | Trackback(7) | Comments(0)