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縄文語のかけらーその1170 (通巻第1872号)
 アイヌ語の「 poru ・ポル」と日本語の「洞・ホラ」という言葉が、実は元もと兄弟の言葉だったのではないだろうか」などと言うと、「馬鹿も休み休み言ってくれ、だいたい発音が違い過ぎるじゃないか !」と思う人が少なくないだろう。
 ...このブログを前から読んでいる方には、私の「兄弟の言葉」論の言わんとしている事がお分かりになるだろうが、最近になって随分増えた新しいブログ読者も多くなったので、アイヌ語の「ポル」と大和言葉の「ホラ」の音が、発音の上でもごく最近になって変化したもので、古くは殆ど同じ音で語られていた事を知っていただく為の証拠をお見せしようと思う。

▽ 奈良時代になる前の古い時代、「ママは昔パパだった」 ❗
...もう何度も使い古して、多くの読者には耳に胝(たこ)が出来たと呆(あき)れられてしまうだろうが、日本語の発音の歴史を語る優れたキャッチフレーズ(惹句)なので、新しい読者に簡単に説明しよう。
 🔺 現代の日本人の言葉の「ハ行」の発音は、実は上古の時代は「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」ではなく、「パ、ピ、プ、ペ、ポ」と語られていたことが知られている。

▼ 母(はは)は「パパ」、花(はな)は「パナ」と発音されていた ❗‼
...やさしいお母さんは、上古の人々から「パパ」と呼ばれていた。それは現代語の母「はは」という発音が唇を使わない喉を息が通過する音であるのに対し、上古の発音はいったん唇を合わせてから、それを弾き破裂させる口唇音(こうしんおん)で発音されていたことが、古い文献から確認されるからである。
 🔶 古い雑謡から
...〽 母には二度逢ひたれども、父には一度(ひとたび)も逢(あは)ず
 これは、父と母という言葉の発音の違いを、唇を擬人化して説明した戯(ざ)れ唄である。「母」という言葉を発音するには唇が二度重なりあうが、「父(ちち)」の語を発音する時は、口を開いているから唇は一度も合わされない~ そう言うことである。
 つまり、「母」は唇の重なり合わない「はは」の発音でなく、唇を重ねそれを二度破裂させる「ぱぱ」という発音だった事が知れる訳である。

◎ 「花」=「パナ」だった事は沖縄方言に今も遺(のこ)っている ❗
...花と言う語の古形は、現代の日本語には失われ「ハナ」に変化してしまったが、沖縄の先島(さきしま)諸島の一部には、今も方言に「花=パナ」の形で残っている。
 🔵 口唇の破裂音が失われたに就いては色々な事情が考えられるのだが、その噺はまたの機会にしよう。口唇音の種類は「パ」だけにかぎらない。母音を異にする「ピ」の音にも同じ事が起こる。大和言葉と沖縄方言や、何とアイヌ語にも股がる音韻の変化の図式が有るのだ。それは次回までの楽しみとしよう。   (次回につづく)

# by atteruy21 | 2022-10-13 11:45 | Trackback(980) | Comments(0)

縄文語のかけらーその1169 (通巻第1871号)

 poru (ポル=ほら・洞)の意味をハッキリさせる面白い中国の物語が有るのを思い出した。子どもの頃に大好きだった孫悟空の、
その悟空が活躍する西遊記(さいゆうき)という物語にでてくる水簾洞(すいれんどう)という洞窟の噺である。
 ⭕ 今の子どもたちにも、ちょっとだけ姿を変えて「ドラゴンボール」という漫画が大人気だが、そこに悟空の名で登場する主人公がいる。尻尾が尻に付いているから、孫悟空の直系の子孫だろう。
...私が未だ小さい子どもだった頃、三つ年上の兄が寝るとき私に話してくれた物語で、孫悟空の話は私は一番大好きで、夢中になって聞いた事を憶えている。

▽ 花果山水簾洞(かかざん・すいれんどう) ~滝壺を掻い潜った先に在る水の無い大空間 ❗
...一回だけと前回に言ったのだが、思い出しただけでもう大興奮してしまったので、前言を撤回して何回か語らせて頂きたい。
 🔵 石から生まれた猿の、つまり、後の孫悟空が周辺の猿を束ねる王様になる噺、西遊記の発端の噺である。
 花果山にある大きな滝の滝壺に飛び込んで、その先に何が有るのか見てくる程の勇気のある猿を王様にしようじゃないか。そう言う噺がまとまって、いろんな猿が尻込みする中で悟空が最初に滝壺に飛び込み、そしてその先に水の無い大空間を見つけ出す。
 その奥には赤い橋があり「花果山水簾洞」の石柱が立っていた。

▼ 洞(ほら)とは、水が流れ込んで出来た空間 ‼
...架空の物語の「水簾洞」も、川の流れの先の滝壺の、その奥に形成された水の無い空間である。札幌扇状地にも、この水簾洞のような地下構造が無数に存在したのではないか。そう私は考えている。
 🔺 アイヌ語で言う「 poru ・ ポル 」は、こう言う「水の無くなった、地下へ入って行く水路(跡)」を指した言葉だと、そう私は考えるのだ。

◎ 日本語の「洞(ほら)」とアイヌ語の「 poru 」は兄弟の言葉 ❓
...日本列島に長い間にわたって隣人として暮らしてきた大和の人々と、アイヌの先人たちが、発音も意味も良く似た言葉をもつ事は何の不思議もない。こんな場合、過去に於いては、文化の進んだ大和の人々の言葉を、文化に於いて遅れたアイヌ民族が有り難く大和の人の話す言葉を真似て採り入れたのだとする、一方的でそっくり返った「借用論」が幅を利(き)かしたのだが、さすがに今は大声でそれを言う人は少なくはなった。
 🔷 地形などという文化も経済力も関わらない言葉を、自分たちの言葉があるにも拘(かか)わらず外の民族から有り難がって取り入れるなど、そんな事を大まじめで言う人が有れば、それは自分の無知を自らさらけ出すだけであると、そう申し上げて置きたい。  (次回につづく)

# by atteruy21 | 2022-10-12 12:20 | Trackback(881) | Comments(0)

縄文語のかけらーその1168 (通巻第1870号)
 アイヌ語の「最後の母語話者」と言われた萱野茂さんも、アイヌ語学の現代の第一人者と評される中川裕氏も、「 poru ポル」という語に「土の中に入って行く穴」と言う訳を与える。
 ...だが、その訳(やく)は間違いとは言えないものの、何処か大事な点を訳し忘れたという印象を拭えない、中途半端な訳語なのだ。
 🔷 中国語の「洞( dong )」という言葉は、偏(へん)に「サンズイ」が付くことからも知れるように、「水が入って行く穴」という観念を軸にして成立した言葉である。

▽ 洞窟は、水の流れが地下に入って行く穴 ❗
...「水の流れが地下に入って行く所」 ~ それがアイヌ語の「 poru ・ポル 」の原意である。単に「土の中に入って行く穴」を指しているわけではないのだ。萱野さんや中川氏が喉元まで出掛かって、それでも言えなかった訳(わけ=理由)を私は知らない。
 🔺 「水の流れが地下に入って行く穴」とナゼ正しく定義できなかったのか ❓

▼ 水の流れが無い洞( ほら= poru )も有るじゃないか ‼
...川の水の流れが無い洞窟もある。札幌近辺の洞窟では、水の流れ込まない涸(か)れた洞穴の方が普通である。恐らく、洞窟が出来上がった時点では豊かな水流が地下に流れ込んだのだろう。だが、時を経て何らかの理由で流れ込む水流の量が減り、或いは水流が渇(か)れて、水無しの洞穴が出来たのだろう。
 🔶 だから、 sat 「干上がった」・ poru 「洞穴」と言うのである。

◎ 扇状地と豊平川の有機的・動的関連が【札幌・ Sat-poro 】の名を生んだ ❗
...札幌扇状地は、長い時間をかけて豊平川や群小の河川が作り上げた地形である。豊平川の自由奔放な流れと、札幌平野の地質の特性が両々相俟(あいま)って、この地形の複合体が出来上がったのである。
 🔵 扇状地の砂礫(されき)=ガレ場の構造が、忍者よろしくある時は地表に現れ、或る時は地下に没する、その変転自在な川の行動を可能にした。
 また、札幌平野の地下の火山灰の粘土の分厚い層が、台地に降った雨や河川の水を地層の下深くに水を染み込ませず、再び地表近くへと導く役割を果たすに与(あずか)った事は特に記憶されなくてはならない。

☆ 地下への流れを poru が導き、地上への水の還流を mem (泉)が支えた !
...札幌扇状地を造り、豊平川を暴れ龍にした poru と mem に就いて、もう一回だけ次回に語ろう。
    (次回につづく)

# by atteruy21 | 2022-10-11 15:14 | Trackback(960) | Comments(0)

縄文語のかけらーその1167 (通巻第1869号)

 木の幹や岩肌などにポッカリと開(あ)いた穴を、大和言葉では「うろ」とか「うつろ」と言った。主な観念は、オノマトペ的に表現すれば、「がらんどう」である。漢字で書けば「洞(うつろ)となる。
 🌑 一方、大地に開いた空洞の事は「ほら」と言うのだが、こちらの方も意味の近い漢字で表すと「洞」となり、木の「うろ」と同様に「洞(うつろ)」の字を使うのだ。
 ...尤(もっと)も、木の「うろ・うつろ」の方は、本来の意味は空虚の「虚」が中心となる意味合いで、空っぽの穴を「うろ」と言った。

▽ 洞(ほら)と言うのは、大地に開いた穴のこと ❗
...大和言葉で言う「ほら」は、地面に開いた空洞を言うのだが、ただ「穴」という意味を表す訳(わけ)ではなく、その穴の出来上がり方をも意識した言葉であるのが注意されねばならない。
 ⭕ 実は、「ほら」というのは、元々の意味は「何か特別の性質をもった穴」なのであるが、一体ナニをもったどんな穴なのか、お隣の中国の漢字をヒントに考えてみようと言うのである。

▼ 洞窟...お隣の中国人の意見を承ろう ‼
...古代の中国人は、洞窟と言うのをどんなものと見ていたのだろうか。私の得意の漢字の字解でヒントを得たいと思う。
 🔷 インターネット検索 「洞」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首を学習 - OK辞典
 皆さんには是非、この「OK辞典」を覗いて頂くこととして、私はそのエッセンスを簡単に紹介しよう。
 ...洞の字の成り立ち 
  字の左側の「さんずい」は、水の流れ・流れる川の象形である。字の右側の「同」の字は「上下の二つの、直径が同じ筒」の意味から、左右の文字を総合すると「水が通り抜けるほら穴」を意味する「洞」という漢字が成り立った。
 
◎ 洞と言う字の意味の方も見て置こう !
...① 「ほら(がけ・岩・大木などにできた、中に何もない穴)」(例 : 空洞)
 ②「むなしい」 ア : 内容がない  イ : 無駄である  ウ : すぐに消えてしまう  エ : 根拠がない
 ③「とおる(通)」 ア : 貫く 突き通す  イ : さとる(はっきり理解する) 見抜く (例 : 洞察)
 ④ 深い、奥深い  以下、省略。
  中途半端だが、以下、次回に回したい。
      (次回につづく)

# by atteruy21 | 2022-10-10 11:40 | Trackback(5) | Comments(0)

縄文語のかけらーその1166 (通巻第1868号)
 網の目状の水路を自由に向きを変えて流れる川、それが浮気な豊平川の姿だった。だが、豊平川の気儘な性格は、横に進路をずらすだけに飽き足らず、地表の上に姿を現したり、かと思うと地下に流れが没したりと、正に変転きわまりない動きをする所に在るのだ。
 🔵 昔の豊平川は、一本の繋がったラインでユッタリと流れるのでなく、布を縫うときに針と糸が布の表面と裏面をジグザグに地表に顔を出したり地下にもぐったりして流れる川でもあった。
 ...前年に山間部に積雪が少なく、従って翌年に雪解け水の水量が少ない時や、日照りが続いて川が干上がると、豊平川は各所で寸断され、川の流れが途切れる場合が有ったのだ。

▽ 途切れた川の流れが、また地表に顔を出す所...それが【 mem メム =泉】❗
...実は、メム(泉)が地表に各所で湧き出るまでには、前段の川の動きが必要なのだ。それを説明しないと札幌扇状地やメムの形成を正確に理解する事は出来ない。
 🔺 干上がりかかった豊平川は、地形を選んで一旦(いったん)地下へ流れ込むのだ。その地下へ潜り込む場所がアイヌ語で言う
【 poru ・ぽル】なのである。

▼ アイヌ語・中川辞典 ポル poru 【名詞】土の中へ入っていく穴 ‼
...萱野辞典も見てみよう。
 🔷 ポル【 poru 】ほらあな。洞窟。土の中へ入っていく穴。
 《私の補足》中川氏も萱野さんも、共通して poru を「土の中へはいっていく穴」だと定義している。これは果たして正しい訳だとは言えるのだろうか。

◎ 不十分な二つの辞典の訳語 ~ それは poru の形成の過程、つまり語源を意識していない ❗
...私は、中川・萱野のお二方とも poru と言う語の成り立ちに十分な注意が向けられていないと考える。
 ⭕ 「土の中へ入っていく穴」って、一体ナニが入っていくの ❓
 萱野さんも中川さんも、肝心な事を最後まで言わずに途中でお茶を濁している。ポルと言う地下へ入って行く穴は、いったい何がそこへ入って行くと言うのか。

☆ 入って行くものは「水」...地下へ流れ込む川、それが poru (ポル)の正体 ❗
...洞窟が出来るには、幾つかの出来方の違いがある。だが、洞窟の大半は水の流れが地下へ入って形成される場合だといって大きな誤りではない。この続きは次回に語ろう。   (次回につづく)

# by atteruy21 | 2022-10-09 11:38 | Trackback(697) | Comments(0)